2001年8月20日
   会 長 メ ッ セ ー ジ


     
第6回ワールドゲームズ
           
ボディビル競技観戦記


                   社団法人日本ボディビル連盟
                     会 長  玉  利    齊 

 日本ボディビル連盟(JBBF)は勿論、ワールドゲームズに参加している日本の各スポーツ競技団体の永年の夢だった秋田第6回ワールドゲームズが開幕した。
 ワールドゲームズの秋田開催を積極的に推進したIWGA(国際ワールドゲームズ協会)のロン・フローリック会長をはじめ、エグゼクティブメンバーとAOC(秋田ワールドゲームズ組織委員会)の林善次郎会長以下、関係者の皆様の実現の為の努力に心から感謝したい。
 まだ開会式と前半の競技が終了した中間段階であるが、ボディビル競技も終了したので、その結果を発表しJBBFの前途の為、日本選手の講評を試みたい。
 秋田第6回ワールドゲームズは、25の国及び地域から、55名が参加して開催された。
 各クラスの成績は別表のとおりであるが、女子ライト級(52kg以下)では、アメリカのパム選手がラハティ第5回ワールドゲームズのチャンビオン日本の水間選手を抑えて栄冠を獲得した。
 パム選手は、全身のディフニッションが際立ってよく、まず筋肉面で水間選手に差をつけたと思われる。水間選手も筋肉に張りがあり、ポージングも存在感があったが、パム選手と比較するとカットが今ひとつで惜敗と云うところかもしれない。しかし、銀メダルの輝きは後続の選手に限りなく勇気を与えた功績は大きい。
 吉良選手は、国際大会初出場で、ワールドゲームズと云う大舞台で4位入賞と云うことは見事と云う他ない。顔が小さく先天的なプロポーションのよさがプラスしていることはあるかもしれないが、雰囲気にのまれず、持てる力を出しきったことは評価すると共に、今後のバルクアップを望みたい。
 女子ヘビー級(52kg超)は、欧米の女性の体位から見れば、ほとんどの女性がこのクラスだけに圧倒的なレベルの高さだった。特に上位3名は筋肉のバルク、ディフニッション、体全体のバランス、表現力の三拍子そろった見事さだった。これらの選手に伍して6位に入賞した西本選手は、本人は不本意かも知れないが、むしろ健闘をたたえたい。しかし、日本ではずば抜けた体のスケールでも、表現力をもっと磨くことが彼女の次の課題だろう。
 男子バンタム級(65kg以下)は、世界チャンピオンの獲得者同士の勝負だった。1位のエジプトのアマウイ選手は、本人の言葉によれば過去7回の世界レベルのチャンピオンシップで優勝していると云う。ブラジルのサントス選手は前回ラハティ第5回ワールドゲームズの覇者であり、また世界選手権でも優勝している。
 津田選手も私の目では、今迄で最高の体を作り上げていたと云ってよい。6位入賞はこの大会のレベルからみて立派なものと云えるだろう。この大会をバネとして大きく飛躍することを期待したい。
 石川選手も日本選手の中で最年長の年令で世界の強豪を相手に持前の度胸のよさでのびのびと力を発揮したことは、とかく自分に小さくとらわれがちなボディビルダーに良い手本を示したといえる。
 男子ライト級(70kg以下)、このクラスでは、期待された合戸選手の4位は残念だった。肩、腕、胸の逞しさは郡を抜く見事さだったが、それだけに広背筋の広がりの足りなさとカーフの弱さが目立ったことは否定出来ない。世界選手権では、一箇所でも欠点があると大きく減点されることを知るべきだ。日本国内では圧倒的なバルクでも、世界レベルでは筋肉、プロポーション、表現力の三位一体が重視されるので、さらに一層の研究と努力を期待したい。
 廣田選手の7位には、今更云う事はない。心からご苦労様と云いたい。日本の男子選手で初めてワールドゲームズで金メダルを獲得し、日本のビルダー達に希望を与えた功績を讃えたい。
 男子ウエルター級(75kg以下)、このクラスはJBBFとして、トップを行く二人のビルダーが出場するだけに最も期待されたところであるが、トップはドイツに持っていかれてしまった。筋肉全体の発達度に一日の長があったと云うところか。しかし、2位銀メダルに輝いた谷野選手は私が見た限りでは、過去最高の充実した肉体を作り上げていた。彼特有の密度のある筋肉、均整美、優雅さのあるポージング、持てる力を存分に発揮しての銀メダルだった。
 JBBFの新しい期待の星、田代選手も堂々の3位銅メダルだった。彼の場合は、筋肉の発達度は質量ともに世界のトップレベルに達し、プロポーションも顔が小さく、よくまとまっている。今後、大きく飛躍する可能性を秘めているが、その為には表現力の向上が要求される。表現力はポージングの巧拙と云うことに加えて人間の体の美しさとは何か、男らしさとは何か、と云うことを内面的に追求することが大事なのではないだろうか。好漢の奮起を期待したい。
 6位に入った近藤選手の活躍は見事だった。筋肉も、精神も、若々しさが溢れて、はつらつとした舞台狭しとのポージングは審査員達に好感を与えたのではないだろうか。
 男子ミドル級(80kg以下)は、このクラスになってくると欧米人の最も多い体位だけに、つぶぞろいの選手ばかりで、タイトルホルダーが沢山いる中での山岸選手の5位入賞は、まずまずだったかも知れない。しかし、このままおさまる選手ではないだけに、捲土重束を期待したい。人間の筋肉の力強さを芸術的に美しく表現するのがボディビルと云うスポーツなのだから、人を感動させるビルダーに大成してもらいたい。
 最後にヘビー級(80kg超)に出場した井上選手は、ウエイトに上限の無い巨漢ぞろいのビルダーの中で、ひときわ小粒に見えたが、しかし、弱々しい感じは全く無く、彼独特の華麗なポージングで善戦し、6位にくい込んだことは日本の重量級の将来に大いに夢を与えたと云えるだろう。
 さて、今回のワールドゲームズは、過去5回のワールドゲームズよりはるかにスケールの大きい大会で、構成演出に地域性と文化性が持ち込まれ、また、ボランティアを活用したホスピタリティと云い、観客の動員力と云い、画期的なものだった。
 また、メディアの取材も多く、特にNHKのTVの放映により、ワールドゲームズの存在は日本の社会に広く知られたと云ってよい。
 JBBFもこれを契機に、ボディビルを競技面、健康づくり面、双方ともに発展し、日本の社会の活力と文化に貢献していきたい。
 尚、第6回ワールドゲームズの総集編を、9月2日(日)、午後5時〜6時、NHKテレビで放映しますので、皆さんご覧になってください。